日記メイン。雑感や管理人tokiwailm(常盤いるむ)の落書きや【ぴく悪】など。サイコ○トラー某は関係ありません。


by tokiwailm

【ぴく悪】BN2と3の間の話。【小説】

「ぴく悪」内イベント、「Blood Night」に関して、チャプター2と3の中間における
うちのキャラクターの行動を、小説らしきものにしてみました。
考えてみると至極長くなってしまい、漫画ではちょっと無理っぽかったので(汗
書いてみると色々イメージが多くなり小説でも長くなってしまった罠。
前・後編ということで。
他の方のキャラクターさんも色々借りております。
ありがとうございます。m(_ _)mでは、拙作ながら。


チャプター2.5―ヴァルター姉妹の場合―

雑居ビルの立ち並ぶ裏通りを一人の男が鼻歌交じりに歩いていた。紺のスーツにネクタイというごく普通のサラリーマン然とした格好だが、整った髪形と顔立ちは清潔感を漂わせている。
視界に入ったものに、ふと彼は足を止めた。道端に大量の赤い液体がぶちまけられている。ちょっとみれば分かる。血の跡だ。まだ新しい。
しかし彼は驚く風もなく、しばらくあたりを見ただけでまた歩き出した。血と分からなかった訳ではない。「外」の街でこのようなことがあれば、即刻警察を呼ぶことになろうことも無論理解している。しかしこのようなことは日常茶飯事なのだ。この街では。
それに血の跡を見つけるのが彼の仕事ではない。彼の見つけるべきは、その血の主。死体だ。この街の住民の多くと同様、彼もまたまっとうな商売の人間でない。
穂積賢司、25歳。職業:黄泉坂CS社員(死体回収業)。

そんな彼を路地の影からうかがう二人がいた。
一人は年の頃十代半ばか、白を基調としたドレス、黄色いバラの飾りのついた白のキャプリーヌ。その顔や手も雪のように白い。両家の令嬢をほうふつとさせる可憐な少女だ。しかし豊かな長髪もまた老婆のように白く、その目は驚いたことに、白目が赤く、瞳が白い。何よりその手にした、赤黒いしみのついたバールは彼女がただの少女ではないことを物語っている。
もう一人も変わった人物だ。いや、「人物」と呼ぶべきか?黒いソフト帽に黒のサングラス、黒のスーツ、そして黒光りする拳銃。上から下まで黒尽くめの格好はアクション映画にでも出てきそうな、まさにギャングだ。しかしその身長は1メートルほどしかなく、頭から腰まで全く同じ太さである。手足も棒のように細く、まるで子供向けの漫画から飛び出してきたかのような姿だ。

「よし、ルキア。いち、に、のさんで飛び出すぞ。」
そのコミカルな外見に似合わぬ渋く、張りのある声で男が口を開いた。
「分かりましたわ、スクエアおじ様。」
ルキアと呼ばれた少女は薄く笑みを浮かべつつバールを握り直す。
「いち、」
それに気付かない様子で、穂積が彼らの潜む路地に近づく。
「にの・・・」
刹那。

その後ろの暗闇から不意に、二本の黒い手が二人に伸びた。
「わ!!」
「きゃ!?」 「!!!ッ・・・ぐは?」
緊張の一瞬にタイミングよく驚かされ、二人はバランスを崩し道路に折り重なった。
「ね?驚いた?ね、ね?」
暗闇から現れたのは化け物でなければ、怪しげな暗殺者でもなかった。年のころ二十歳頃か、赤毛の女性が子供のように騒いでいる。ルキアと同じく、かつて暗黒街に存在した孤児院、マーフィーホームの出身者。―現在は「アプリコットマーフィーの娘」と呼ばれている―その一員、ミモザだ。
穂積は目の前に突然現れた珍客たちにしばし呆然としていたが、それらが何者かを察知すると、身をひるがえし駆け出した。
「くそっ、てめぇ待ちやがれ!」
ルキアの下敷きになったままスクエアは拳銃を構え、発砲した。続いてルキアもどこからか取り出した大きな鉄釘を投げつける。しかしその無理な体勢で狙いが定まるはずもなく、穂積の体をわずかにかすめたのみに終わった。

「まったく…あんたのおかげで獲物に逃げられたじゃないか!」
これまた漫画のように頭から湯気をぷんすか出しながら、スクエアが吐き捨てた。
「…でぇ、小夜子さんとこのバイトは順調なの?」
「ってお前ヒトの話を聞けッ!」
ミモザはスクエアをまるで無視してルキアに話しかけている。
「ええ、皆さん優しいですし…」
そう答えるルキアはわずかに顔をしかめている。まだ日も高いというのに、相当酒臭い。今日が特別なわけでなく、彼女はいつもこうなのだ。現に今も、漢字の書かれた酒瓶を片手に携え時折口に運んでいる。
(「…マーフィーのパパンとやらは娘に何を教えてんだ…」)心の中でスクエアは毒づいた。彼女らの前で実際に「パパン」の悪口など口に出せば、良くて半殺しだ。

そんなこんなでミモザが先ほどの酒瓶を空にし、二本目を半分ほどあけた頃。ミモザは通りの向こうを進む人影を見つけ、そちらに駆け出した。
「おっ?ニードレットちゃんとスカーレットちゃんも発見!とっつげきぃ!」
彼女が突撃する先には三人の人物がいた。
先頭を歩くのはショートカットに眼鏡をかけた真面目そうな女性だ。その服は安全ピンや針、大きなリボンといった小物で派手に飾り付けられている。彼女もまた、アプリコットマーフィーの娘の一人。何でも屋・Purpurrotに所属するニードレットである。
そのやや後ろを、少女を背負った大柄な男が続く。彼もPurpurrotの構成員、阿黒だ。スクエアと同様に黒づくめの格好だが、もちろん普通の、やや精悍な体型をしている。
彼に背負われている小柄で細身な少女の名はスカーレット。アプリコットマーフィーの娘の一人で、やはりPurpurrotの構成員。見た目は幼いが、赤い服と鳥の頭蓋骨を模した仮面、両手の鉄の爪をトレードマークとする、怪力の殺人鬼だ。
服以外も赤黒い血で汚れており、道に点々と跡を残しているが、おおかた今日も人を殺して返り血をたっぷり浴びたのだろう。今は阿黒の背で寝ているのだろうか、顔を伏せたまま動かない。

ミモザの接近に気付き、ニードレットと阿黒は振り向いた。スカーレットは動かない。
「よぉーニードレットちゃん久しぶりぃ!元気してたぁ?」
満面の笑顔で話かけるミモザにニードレットは戸惑った表情だ。同じアプリコットの姉妹としては久々の再開を喜んでもよさそうなものだが。
「お~、スカーレットちゃんはイケメンにおんぶされておねむかい?」
阿黒は戸惑いを通り越してむすっとした表情だ。スカーレットは依然として動かない。
どこか、様子がおかしい。
「まったく、うらやましいぞ!この、甘えん坊が!」
ニードレットが制止するより先に、ミモザがスカーレットの頭を軽く小突いた。スカーレットはやはり、反応しない。それどころか力なく、がっくりと首をうなだれた。微笑むように薄く開いている目と唇に、生気はない。
「え゛!?」
ミモザが小突いた時のままの姿勢で固まる。
「え?」
ミモザは物問いたげにニードレットの方を見るが、黙って顔を背けられてしまった。
「えぇ~!?」
ようやく目の前の事態を理解しかけたようで、みるみる顔が青ざめていく。スクエアもそれを察知したようで、無言で帽子を引き下げた。ルキアは何やらただ事でないことは分かったようだが、まだそれには気付いていないようだ。

阿黒に背負われていたスカーレットが、既に死んでいることに。

酒瓶がミモザの手から滑り落ち、がしゃんと音を立て割れた。

(後編に続く)
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by tokiwailm | 2008-10-25 12:27 | Pixiv・ぴく悪