日記メイン。雑感や管理人tokiwailm(常盤いるむ)の落書きや【ぴく悪】など。サイコ○トラー某は関係ありません。


by tokiwailm

【ぴく悪】BN2と3の間の話:後編【小説】

前回に引き続き。
当初チャプター3の絵と一緒に、と思っていたのですが案外手間取っているので先に。
山高帽子さんやゆだいらさんの絵と微妙に設定が矛盾してしまいました(汗

チャプター2.5―ヴァルター姉妹の場合(後編)―

廃工場に隠されたPurpurrotのアジトに一行がたどり着いたのは、日の傾きかけた夕方だった。スカーレットの遺体を運び込んで、阿黒が連絡に出ようとしたところ、もう一団の仲間が沈痛な面持ちでアジトに帰ってきた。
彼らもまた、仲間の遺体を持ち帰っていた。ぶっきらぼうで金に汚いが、スカーレットを何かと気遣っていた青年、マサムネの遺体、らしい。布のかけられたそれはスカーレットの横に置かれた。無言のままの仲間を見かね、阿黒が布をめくり、そして顔をしかめた。
首と胴が、切り離されている。

やがて報告を受けて戻ってきたPurpurrotのボス、灯丈乙姫はしばしの沈黙の後、外勤組である「別働隊」に冷静かつ簡潔に指示を出し、仲間を連れ自らも外に出て行った。その場には数人の内勤組、スクエア、アプリコットの姉妹、そして二つの遺体のみが残された。

沈黙。ただ今はそれが続いている。

この暗黒街では、人が殺されるのは決して珍しいことではない。正確に把握している者などいないだろうが、犠牲者が一日三桁を数える日もあるだろう。それでもやはり苦楽を共にしてきた仲間の死は、この街の生活で心の麻痺した者にも、圧倒的な現実となって暗い影を落とす。
いっその事、狂った殺人鬼にでもなってしまえば、そんな感傷を感じることもないだろう。または先ほどの乙姫のように、そんな感情も理性で押し殺し、毅然と振舞うか…だが万人がそうできるはずもない。
今スカーレットのまわりを囲んでいる仲間たち、そしてアプリコットの姉妹もそうであった。

どれほどの沈黙が続いただろう?やがてミモザが口を開いた。
「・・・だから・・・」
自然と何人かの視線が彼女を向く。彼女は一同に背を向け、部屋の隅でひざを抱えて座り込んでいる。
「だから・・・こんな街、とっとと出て行けって言うのよ。」
そんな彼女を壁に身をもたげていた長身の女性が答えた。
「・・・こんな時にまで寝ぼけたこと言ってるんじゃないよ。」
彼女もまたアプリコットの姉妹の一人、ミカエラである。Purpurrotに「仕事」で来ていたところ、偶然この場に出くわしたらしい。どうもこの姉妹は何かと引かれ合ってしまうらしい。手にした酒瓶をせわしなく口に運ぶ彼女の傍らには、既に2,3本の酒瓶が転がっていた。
ミカエラの言葉を聞いているのかいないのか、ミモザがまたつぶやく。
「・・・棺を運ぶのにはもう飽きたわよ・・・」
先ほどまでの雰囲気はどうしたのか、非常に暗く、嘲る様な口調だ。スカーレットが死んだせいだけではない。付き合いの長い者なら知っているだろう。これが酒を飲んでいない、本来の彼女なのだ。
「アンタねぇ・・・」
不機嫌な表情でずかずかとミカエラが近寄る。ミモザはさらに続けた。
「まったく、面倒見きれないわよ。やんちゃだの、命知らずだの・・・キチガイだの・・・」
「いい加減にしときな。」
ミカエラがミモザの肩に手をかける。ミモザは首だけ振り返り、暗い目で答えた。
「・・・そうそう。騒ぎの片棒担いでる、金の亡者もいたわね。」
「黙れ。」
「・・・あ~あ。・・・うちら姉妹にまともなのはいないのかねぇ。」
「・・・黙れっつってんだろ!」
ミカエラがミモザの襟首をつかんで持ち上げる。
「外でヌクヌクと暮らしていい子ちゃんしてるアンタに何が分かるんだ!え!?」
「ガーベラ!」
たまりかねたニードレットがミカエラを制止する。ガーベラはミカエラの姉妹の間での通称だ。構わずにミカエラがまくし立てる。
「話に聞いてるだろ!前に金持ちに拾われて、外へ養子に出た妹のこと!
 姉妹揃って、花束とプレゼント持って、笑顔で送り出したさ!
 ところが一週間も経たずに、家族全員バラしてこの街に逆戻りだ!
 ・・・ここでしか生きられないんだよ!アタシ達は・・・!」
言葉の最後には怒りより口惜しさがにじんでいた。しばし大人しく聞いていたミモザだったが、やがて口元を皮肉げに歪めて答えた。
「だからぁ?お互いダメ同士仲良くやろうってワケぇ?」

「て、め、え、ぇ・・・」
いよいよ真っ赤になったミカエラがミモザを睨みつける。一方のミモザはそんなこともどこ吹く風か、ヘラヘラ笑っている。
どこからか、不気味なうなり声が聞こえてきた。・・・ミカエラの脚からだ。それが何を意味するか分かったニードレットは慌てて止めに入ろうとしたが、既にミカエラは大きく脚を振りかぶっていた。

「うるせえぞ!」
低く、ドスの利いた声に一同は思わず動きを止めた。声の主はスクエアだ。
「さっきから黙って聞いてりゃ、女が腐ったみてぇにグチャグチャと・・・」
腰を上げてミカエラとミモザに近づく。
「そりゃここで暮らしてりゃ危険なことばかりだ。最悪、死ぬかもしれねぇ。
 それに住んでる奴だって、どうしようもねぇロクデナシばかりかもしれねぇ。」
二人の近くで足を止め、見上げて語りかける。
「だがな、お前らはマーフィーホームでパパンに何を習った?
 酒飲んで愚痴ってウサ晴らしすることか?
 それとも自分に閉じこもって逃げ隠れることか?
 ・・・違うだろ!」
ミカエラは一転して、神妙な面持ちだ。ニードレットとルキアも、注目している。
「お前らは例え『娘』といっても、あの偉大なアプリコット・ヴァンドーラの教え子なんだ。
 もっと誇りをもって行動しやがれ! 考えろ! 自分が今本当にやるべき事を!」

ミカエラはミモザを放し、無言でスクエアに礼をすると、酒瓶を携え外へ出て行った。ミモザは床にへたりこみ、しばし困ったように頭をかいていたが、やがて立ち上がり、外へ向かおうとした。
「おい姉ちゃん、忘れ物だぜ・・・お、あったあった。」
スクエアが椅子によじ登って戸棚から何かを探し出し、ミモザに投げ渡した。緑色の酒瓶だ。
「ミカエラの好みの酒なんだってな。前に一緒に飲んだとき言ってたぜ。
 あんたにも飲ませてやりたいってな。何より、まず一杯やれや。
 いつまでもそんな暗いツラされちゃ、鬱陶しくて仕方ねえぜ。」
ミモザは少々照れたような表情でそれを受け取ると、これまた無言で外へ出て行った。

「何だかんだ言って、似たもの同士なんだな・・・」
スクエアはつぶやき、再び二つの遺体の元に戻った。
「おいおいオッサン、酒の代金は後できっちり払ってもらうぜ?
 ・・・というか、今出せ。」

彼、マサムネが生きていたら多分こう言っただろう。
もちろん、その言葉は無い。その口は何かを言いかけたような形で硬直している。
彼は最期に、誰に、何を言いたかったのだろう?
同じ仲間である彼女、スカーレットとはあの世で会えただろうか?
「下らねぇ。そんなこと考えたって一銭にもならねーぜ。」
だけど今は、そんな下らないことでも思いを馳せてやることが、この街でのせめてもの流儀なのかもしれない。

(BN3へ続く。)

以上、長々と失礼しました。ミカエラの言う「出戻り娘」は誰のことか?については特に考えてません。既出のキャラかもしれませんし、まだ出ていないキャラかもしれません。
というかミモザのシラフ酷いですが、姉妹共々、色々と複雑なキャラクターなのです。このあたりは今後うまく表現していきたいところ。
余談ですがミカエラのシラフはデレ、というかさみしがりの泣き虫です。
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by tokiwailm | 2008-10-28 22:59 | Pixiv・ぴく悪