日記メイン。雑感や管理人tokiwailm(常盤いるむ)の落書きや【ぴく悪】など。サイコ○トラー某は関係ありません。


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酒見賢一「後宮小説」。

・酒見賢一 著、 「後宮小説」、 新潮社、 (1989)。

最初はアニメリメイク版「雲のように風のように」を最近見て、
「原作はこの小説」と言う事を聞き探していた本です。

舞台は17世紀中国。素乾末期の後宮における人間模様を描いたもの。
形態としては歴史書や歴史家の記録を参考にし、「著者」の自分なり解釈を
物語形式として語ったものです。
歴史と言っても決して堅い無味乾燥なものでなく、
文調はあくまで軽く言葉も(歴史書からの引用は除き)平易、
時には当時の思想や風俗について深く語り、
時には登場人物の心理を描写、歴史書の記述を引用して分析し、
時にはタイトルらしく官能的な文句で読者の関心を引き(笑)、
と飽きさせません。

しかしこの歴史小説の最大の特徴は、この物語、人物、国や風俗が全て
ファンタジー、つまり架空のものである点です。
私はアニメを見た時点ではすっかり「実話を元にしたもの」と考えていたのですが、
この事実を知った時、「ええ?!」と思ったものです。
もちろん全て実話ではないにしろ、国や人物は実在人物かと思っていました。
しかも架空であると知ってからもこの原作小説を読むと、その深く細かい設定、描写に
「空想でここまで出来るのか?」と感心することしきりでした。
特にキャラクターの立ち方がすごく、「実際に会ったのでは?」という位です。

空想だけにこれは分類としては「ファンタジー小説」。
通常のファンタジー小説といったら最近の「ハリーポッター」でよく知られる
「剣と魔法の世界」か、そうでなくても超人的な人間や宇宙人、
その他魑魅魍魎が大冒険&大活躍、というものが多いのですが、
等身大の人間が現実感のある舞台、設定で物語を演じる、
という点で異色、かつ斬新であると言えます。
しかもそれだけ超常現象もなく、盛り上がりもなさそうでありながら、
面白いのです。只者ではありません。

第一回日本ファンタジーノベルズ大賞に応募され、
見事大賞を獲得したそうですが、にべなるかな、です。
そのくらいインパクトのある作品です。

一般的なファンタジーに飽きた方、歴史小説が好きな方には是非お薦めです。


追記。
私は読書を趣味としているのに今までこのカテゴリーがなかったのが
不思議ではあります。折角のブログなのにもったいないので、
以後は「お薦め」な本があれば挙げていくつもりです。
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by tokiwailm | 2005-06-25 22:19 | 読書録